ソフトウェア開発において、デザインパターンは複雑な問題を解決するための重要なツールです。一般的にデザインパターンは、複数のクラスやオブジェクト間の相互作用に焦点を当てています。しかし、単一のクラスにおいても、さまざまな利用方法やパターンが存在し、これらはしばしば見過ごされがちです。本記事では、単一のクラスの利用方法を3つのパターンに分類し、それぞれの特徴、利用シナリオ、および利点と欠点を詳細に解説します。
この分類により、開発者はクラス設計の際により多くの選択肢と明確なガイドラインを持つことができます。また、これらのパターンを適切に適用することで、ソフトウェアの柔軟性、再利用性、およびメンテナンス性が大幅に向上します。本記事では、データクラスパターン、サービスクラスパターン、およびステートホルダークラスパターンの3つを取り上げ、それぞれのパターンについて解説していきます。これらのパターンは、データの構造化、ビジネスロジックの集中化、そして状態管理とUIへの通知という異なる側面に焦点を当てています。
それでは、単一のクラスの使い方を変えるだけで、ソフトウェア設計の可能性がどのように広がるかを見ていきましょう。
データクラスパターン:
Person
クラスが挙げられており、イミュータブルな性質がFlutterなどのフレームワークで有利に働く。サービスクラスパターン:
PersonService
の例では、PersonRepository
を通じてPerson
オブジェクトの操作を行う。ステートホルダークラスパターン:
ChangeNotifier
を使用して、FlutterのUIに状態変更を通知する。PersonStateHolder
の例では、PersonService
を使用してPerson
の状態を変更し、UIへ通知する。概要:
適用可能性:
構成要素:
実装手順:
利点と欠点:
実例:
class Person {
final String id;
final DateTime birthday;
final String familyName;
// プライベートコンストラクタ
Person._(this.id, this.birthday, this.familyName);
// 誕生時のファクトリーメソッド
factory Person.born({String familyName}) {
return Person._(Uuid().v4() DateTime.now(), familyName);
}
// 結婚による家族名の変更を反映するメソッド
Person changeFamilyNameUponMarriage(String newFamilyName) {
return Person._(this.id, this.birthday, newFamilyName);
}
// 年齢の計算
int get age {
var now = DateTime.now();
var age = now.year - birthday.year;
if (now.month < birthday.month || (now.month == birthday.month && now.day < birthday.day)) {
age--;
}
return age;
}
}
このクラス定義では以下の点に注意しています:
Person._
はプライベートコンストラクタです。これにより、クラスの外部から直接インスタンス化することはできません。factory Person.born
は、生まれたとき(現在の日時)のPerson
オブジェクトを生成するファクトリーメソッドです。changeFamilyNameUponMarriage
メソッドは、結婚による家族名の変更を処理します。新しい家族名を受け取り、新しいPerson
インスタンスを生成して返します。概要:
適用可能性:
構成要素:
実装手順:
利点と欠点:
了解しました。サービスクラスパターンの例として、先ほどのPerson
クラスに関連するビジネスロジックを扱うPersonService
クラスを示します。このクラスはPerson
オブジェクトに関する操作やロジックをカプセル化し、依存関係を注入して処理を行います。
実例
class PersonRepository {
// このリポジトリクラスは、Personオブジェクトの保存や取得を担う
Future<Person> save(Person person) async {
// データベースにPersonを保存するロジック
// 保存したPersonオブジェクトを返す
}
Future<Person> findById(String id) async {
// IDに基づいてPersonオブジェクトを取得するロジック
// 取得したPersonオブジェクトを返す
}
}
class PersonService {
final PersonRepository personRepository;
PersonService(this.personRepository);
Future<Person> createPerson(String familyName) async {
var newPerson = Person.born(familyName: familyName);
return personRepository.save(newPerson);
}
Future<Person> loadPerson(String personId) async {
return personRepository.findById(personId);
}
Future<Person> changeFamilyName(String personId, String newFamilyName) async {
var person = await personRepository.findById(personId);
var updatedPerson = person.changeFamilyNameUponMarriage(newFamilyName);
return personRepository.save(updatedPerson);
}
}
説明:
PersonRepository
: Person
オブジェクトの永続化(保存や取得)を担当するクラスです。データベースや他のデータソースとのやり取りを抽象化しています。PersonService
: Person
に関するビジネスロジックを実装するクラスです。PersonRepository
を使用して、Person
オブジェクトの作成や更新などの処理を行います。概要:
適用可能性:
構成要素:
Person
オブジェクト)。実装手順:
利点と欠点:
了解しました。このシナリオでは、PersonService
を利用してPerson
オブジェクトの状態を変更し、その変更をUIに通知するPersonStateHolder
クラスを設計します。このクラスでは、FlutterのChangeNotifier
を利用してUIへの通知を行います。ChangeNotifier
は、状態の変更をリスナーに通知するためのFlutterのメカニズムです。
実例
import 'package:flutter/material.dart';
class PersonStateHolder extends ChangeNotifier {
final PersonService personService;
Person? person;
PersonStateHolder(this.personService);
Future<void> createAndLoadPerson(String familyName) async {
person = await personService.createPerson(familyName);
notifyListeners(); // UIに状態変更を通知
}
Future<void> loadPerson(String personId) async {
person = await personService.loadPerson(personId);
notifyListeners(); // UIに状態変更を通知
}
Future<void> changeFamilyName(String newFamilyName) async {
if (person == null) return;
person = await personService.changeFamilyName(_person.id, newFamilyName);
notifyListeners(); // UIに状態変更を通知
}
}
説明:
PersonStateHolder
クラスはChangeNotifier
を継承しています。これにより、状態の変更をリスナー(通常はUIウィジェット)に通知できます。createAndLoadPerson
, loadPerson
, changeFamilyName
の各メソッドは非同期処理を行い、PersonService
を通じてPerson
オブジェクトを作成、読み込み、更新します。notifyListeners()
を呼び出すことで、UIに状態の変更を通知します。この記事は、単一のクラスにおける多様なデザインパターンの利用方法を3つのカテゴリーに分類し、具体的な例を用いてそれぞれのパターンを明確に説明しています。これらのパターンは、データの構造化(データクラスパターン)、ビジネスロジックの実行(サービスクラスパターン)、状態管理とUI通知(ステートホルダークラスパターン)に焦点を当てており、単一のクラスの柔軟で効果的な利用を可能にします。これにより、ソフトウェア設計における明確なガイドラインと、多様なシナリオに適応するための強力なツールが提供されています。
ソフトウェアエンジニア。趣味は競馬、写真、ゲーム。
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